〜五十肩・肩関節周囲炎について〜
・本記事から得られるもの、理解できる事
〇「五十肩/肩関節周囲炎」について、ある程度理解できる
〇「五十肩/肩関節周囲炎」を緩和する方法が分かる
それでは、さっそく解説していきます!
こんにちは、Basisの新田です。
今回は皆様が良く耳にすると思われる五十肩/肩関節周囲炎について、少しでも分かりやすく伝わるように記事を書いていけたらと思います。実はこの2つは全くの別物ではないことが、記事を読み進めて頂くと理解できてくるはずです。今回も論文やデータを参考にしながら、五十肩/肩関節周囲炎を緩和するにはどうすれば良いのかも共有していきたいと思います。
まず五十肩/肩関節周囲炎を知るために、肩こりの記事を軽く復習していきましょう。肩こりの記事では①本態性②症候性の2つに肩こりを分類させていただきました。今回の五十肩と肩関節周囲炎は主に症候性(何らかの疾患が原因で起こる)であるため、ここを中心に深掘りしていきましょう。
はじめに五十肩に関してですが、この言葉が使われ始めたのは実はつい最近のことではありません。なんと、江戸時代に書かれた俚言集覧という書物で既に登場しているのです。「最近でも五十肩って聞くのに、そんな昔から使われているはずがない」なんて言葉も聞こえてきそうですが、実際に「凡、人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛む事あり、程過ぎれば薬せずして癒ゆるものなり、俗にこれを五十腕とも五十肩ともいう」と記載されています。
この言葉を私なりに解読すると、「人間、50歳にもなると手や腕の関節が痛むことがある、それでも時間が経てば薬も使わずに治る。これを五十肩と言う」という形が近いと思います。ここまで見れば、五十肩は40代~50代の人が最もなりやすい病気であることは明確に分かるかと思います。
もちろん今でもこの五十肩と言う言葉は医学的に用いられていますが、最近はこの五十肩という大きな枠組みの中に様々な疾患が含まれているという考えが普及しており、五十肩の中から肩関節周囲炎をはじめとした腱板損傷や上腕二頭筋炎などに細分化して理解するという作業が必要になります。
次に肩関節周囲炎に関してですが、これも上記で説明した五十肩の中に含まれる病名の1つです。つまり、もう少し詳細に区分けしなければいけません。文献を読んだ中で多かった分類は、肩関節周囲炎≒癒着性肩関節包炎(肩峰下滑液包炎)や凍結肩などに分類されることが多いようです。肩関節周囲炎の特徴的な症状として、関節滑膜の炎症(特発性:理由が分からないものではない)と肥厚があることや、肩峰下滑液包の血流が増加していることが特徴です。
そして、肩関節周囲炎も40代~50代が最もかかりやすい病気とされています。この疾患では特徴的な症状の進み方を呈します。炎症期(安静にしていても痛い・夜間の痛みがある)、拘縮期(痛みが徐々に楽になり、肩の可動域の制限が強くなる)、回復期(肩の可動域が回復してくる)という経過です。
図1.肩関節周囲炎の病期(症状の進み方)
さらに論文では肩関節周囲炎になりやすい人の特徴もいくつか報告されていました。肩関節周囲炎の患者の約35%には脳卒中、糖尿病、心疾患、呼吸・循環器疾患などの既往歴が最低でも1つはあった。肩関節周囲炎は座って仕事をしている人を中心に好発しているという報告もあり、この記事を読んでいる方で「普段、デスクワークしかしてない・・・」という心当たりがある人は、まず日常生活において、「歩く」ことを取り入れていきましょう。
そして最後に、今回取り上げた病気と直接関係しないイメージがある糖尿病や心疾患がなぜ肩の痛みや硬さにつながるのかを解説していきたいと思います。まず、大前提として糖尿病や心疾患は身体の中で炎症を発生させやすい状態になってしまいます。
機械的ストレス(肩を動かすことによる、圧縮や捻りのストレス)による反応が強くなる→それにより、線維芽細胞の増殖と分化を刺激しやすい→細胞の正常な代謝(私たちの身体は、常に細胞を生み出す/壊すという作業を繰り返し行っています)に不均衡が生じ、Ⅲ型コラーゲンを含む硬くて肥厚した肩関節包が生じる→さらに機械的ストレスが強くなる・・・というサイクルが繰り返されることで、肩関節の動きは徐々に硬くなっていきます。
ここまでをまとめると、①五十肩の中に肩関節周囲炎が含まれる②どちらも炎症を中心として進行し痛み・肩関節の動きが制限されてしまう③糖尿病や心疾患は病気の発症リスクになるということが言えます。
五十肩や肩関節周囲炎に効果的な運動や日常生活で気を付けることは、以前に書かせて頂いた肩こりについてと肩のつまりについてでも触れていますので是非、そちらの記事も参考にしていただけると幸いです。
今回は2つの疾患について書かせていただきました。かなり難しい記事になってしまった自覚はありますが、この記事を読んだ皆さんの肩が痛い・痛かった理由を知る1つのきっかけになればと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。
Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田
参考引用文献
1) Lan Tang, Kang Chen et al: Scapular stabilization exercise based on the type of scapular dyskinesis versus traditional rehabilitation training in the treatment of periarthritis of the shoulder: study protocol for a randomized controlled trial:2021 Trials 22, Article number:713
2) Christopher M Jump, Kathryn Duke et al: Frozen Shoulder A Systematic Review of Cellular, Molecular, and Metabolic Findings: JBJS Reviews: 2021 January 26: Volume 9, Issue1.
3)Sophie Abrassart, Franck Kolo et al:‘Frozen shoulder’ is ill-defined. How can it be described better? : EFORT Open Reviews: 2020 May: Volume 5, Issue5 : 273-279.
4)Cintia Garcilazo, Javier A Cavallasca et al: Shoulder manifestations of diabetes mellitus: Curr Diabetes Reviews: 2010 Sep: Volume 6, Issue 5.