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足関節捻挫について

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・本記事から得られるもの、理解できる事

〇「足関節捻挫」についてある程度理解できる

〇「足関節捻挫」後に気を付けるべきことが理解できる

〇「足関節捻挫」を予防する方法が分かる

それでは、さっそく解説していきます!

こんにちは、Basisの新田です。

 今回は運動経験者であれば1度は経験したことがある、足関節の捻挫について解説していこうと思います。もちろん運動経験者でなくても、階段やちょっとした段差を踏み外したりして、捻挫をしてしまったことがこの記事を読んでいる皆様の中にもいるかと思います。今回も論文やデータを参考にしながら、捻挫とは実際どんなものなのかを少しでも分かりやすく伝わるように書いていけたらと思います。

 まず、足関節捻挫のほとんどは「内反捻挫」という内側に足裏が向くような形でケガをすることが大半を占めます。かなり珍しいケースとして「外反捻挫」という、足裏が外を向くような形でケガをすることもありますが、これはスキーやスノーボードなど足首が固定されている状態で捻る、高所作業からの転落で高エネルギーがかかるなどケガをする場面自体が限られてくるので今回の記事では、一般的にも想像しやすい「内反捻挫」に関して書いていきたいと思います。

図1.代表的な捻挫(内反捻挫)

 それでは最初になぜ内反捻挫の方が多いのかを簡単にまとめていきます。①内反方向への可動性が大きい②外側の靭帯は内側の靭帯より強度が低いことが理由となります。足関節というのは、脛骨・腓骨・距骨によって構成される関節であり、内反という動きは足首を前に倒す+足裏を内側に向けるという動きです。逆に外反という動きは足首を起こす+足裏を外に向けるという動きになります。

記事を読んでいる皆さんも試してみると分かりやすいと思いますが、足首を前に倒す+足裏を内側に向ける動きが1番足首の動きが大きいことが分かると思います。そしてこの動きの組み合わせがまさに、捻挫をするときの動きになります。そのため、内反捻挫が足首の捻挫で頻度が高くなる理由になります。

 そして②外側の靭帯が内側と比較として強度が低い理由としては、①の理由からもつながるのですが、成長の過程で足首は内側に倒れることが多い≒内側にある靭帯へ圧迫するストレスがかかるということを繰り返しているため、内側の靭帯はストレスに対抗するため組織的に強度が高くなっているのです。逆に言えば、足首が内側に倒れる=外側は引っ張られるストレスがかかる≒伸張ストレスが多くかかり、徐々に引き延ばされる状態となり内側と比較して強度が低い状態になります。

足関節捻挫で受傷するのは外側の組織が主要なものであるとしましたが、簡単に名前をまとめていきます。前距腓靭帯(ATFL)、踵腓靭帯(CFL)が足関節捻挫における主要な受傷組織として取り上げられています。その理由としては、この2つの組織がどれだけ損傷しているかで重症度を決めるFreyの分類が用いられているからです。重症度はⅠ度~Ⅲ度で表現され、Ⅰ度:正常 Ⅱ度:前距腓靭帯・踵腓靭帯の部分断裂 Ⅲ度:前距腓靭帯・踵腓靭帯の完全断裂となります。

少し難しい言葉が多くなってきましたので、簡単にまとめていくと①足関節の捻挫は「内反捻挫:足首が前+内側に倒れる」がほとんど②その理由は外側にある靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯)が内側の靭帯よりも組織的に不安定だからとなります。ここからは、「捻挫をした後の回復具合ってどうなの?」、「どうすれば捻挫を予防できるの?」、「捻挫をした後って結局どうすれば良いの?」などの疑問を解消できる内容を書いていきたいと思います。

 さっそくですが、この記事を読んでいる皆さんに思い返して頂きたいことがあります。足首を捻挫した後に病院で診察~治療までを経験したことがある人はどれだけいるでしょうか。ちなみに私自身は学生時代に部活動を通じて捻挫は何度か経験がありますが、病院に行ったことは全くありませんでした。現在は足首に異常を感じることなく生活できていますが、本来は適切な治療を受けることを論文データからお勧めします。

 1つ目の論文はアメリカにおける疫学調査にはなりますが、足関節捻挫を経験したことがある人の90%以上が受傷後30日以内に適切なリハビリテーション(ここでは治療や運動と考えてもらって大丈夫です)を実施していなかったと報告されています。そして2つ目の論文では、足関節捻挫を経験した人を1年間かけてどんな経過だったのか研究した結果、多くの患者は痛みと主観的な不安定さを自覚しており、3年以内に約3割の人が再捻挫に至ったことがあると報告されていました。

さらに別の論文によると、高校生アスリートを対象にしていますが足関節捻挫受傷後、90%以上が約1週間で競技に復帰しているとされています。その原因としては、リハビリテーションをはじめとしたケアの重要性の認識不足、捻挫再発や後遺症に関する知識の不足が関係しているとされています。そして驚くべきことに論文上では、捻挫で損傷した靭帯の回復には”少なくても”6週間~3ヶ月の期間が必要であると言われているため、損傷した軟部組織などの回復が十分になされないまま競技復帰をしている現状があるのではないかとも報告されています。

 このように、「捻挫程度なら病院にかかる必要はない」と思ってしまいがちですが、靭帯が回復する期間はおそらく今までみなさんが想像していたよりも長くかかり、人にもよりますが、捻挫から1年経過しても不安定感を自覚するケースがあるということが分かります。私自身も腫れがわずかで歩くと痛いけど、病院に行くほど酷くないと自己判断をして部活動に勤しんでいたため、いまこのような論文を見つけて読んでしまいなんとも言えない気持ちになっています。

いまこの記事を読んでいる皆さんが私と同じような気持ちや経験をしないためにも、直近で捻挫をした覚えがある人はまず、医療機関にかかって診察を受けることをお勧めします。そしてそのうえで、足関節捻挫の予防対策として①バランスや神経・筋コントロールに重点を置いた総合的リハビリテーションを最低3ヶ月間続けること②足関節周辺の筋群(長腓骨筋や短腓骨筋)、股関節伸展筋(大殿筋)および外転筋群(中殿筋や小殿筋)を強化・改善すること③足首の可動域制限を改善することが論文的に推奨されており、私個人としても強く推奨したいところです。

図2.当施設での運動風景(写真協力:施設代表の山下)

上記3つの対応を個人的にも強く推奨するのは、足関節が慢性的に不安定になる慢性足関節不安定症(CAI:Chronic Ankle Instability)と呼ばれる足関節捻挫の後遺症があるからです。この記事を読んでいる皆さんを不安にさせたいわけではありませんが、CAIは初回捻挫の受傷後、40~75%の割合で発症すると報告されています。代表的な症状は、歩行時に突然足首の力が抜けたように内反してしまう”giving way”があり、この症状は足関節捻挫の再発リスクを示す重要な症状の1つとされています。

当施設ではピラティスをはじめとした器具が数多く取り揃えてあり、上記の①~③まで幅広く対応できますので、この記事を読んで「そういえば、足首を捻ったことがある」、「最近、歩くと足首に違和感が・・・」など足首の痛みや不安感が気になった方はお気軽に相談していただければと思います。

 今回も内容が盛りだくさんになってしまいましたが、ここまで読んで頂いた皆様の足首に関しての不安を少しでも軽減する参考になればと思います。最後まで読んで頂きありがとうございました。失礼いたします。

Basis~からだのメンテナンススタジオ~ 新田

参考引用文献

1)Rogier M van Rijn, Anton G van Os et al.: What is the clinical course of acute ankle sprains? A systematic literature review.: Am J Med.: 2008 Apr;121(4): 324-331.

2)篠原 順司:スポーツ活動における足関節捻挫-後遺症と捻挫再発予防について-, 日本アスレティックトレーニング学会誌, 第3巻 第2号:127-133, 2018年.

3)Gwendolyn Vuurberg, Alexander Hoorntje et al.: Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an evidence-based clinical guideline.: Br J Sports Med.: 2018 Aug;52(15): 956.

4)Mark A Feger, Neal R Glaviano et al.: Current Trends in the Management of Lateral Ankle Sprain in the United States.: Clin J Sport Med.: 2017 Mar;27(2): 145-152.

5)Tricia J Hubbard, Charlie A Hicks-Little.: Ankle ligament healing after an acute ankle sprain: an evidence-based approach.: J Athl Train.: 2008 Sep-Oct;43(5): 523-9.

6)Jennifer M Medina McKeon, Heather M Bush et al.: Return-to-play probabilities following new versus recurrent ankle sprains in high school athletes.: J Sci Med Sport.: 2014 Jan;17(1): 23-8.

7)Thomas W Kaminski, Jay Hertel et al.: National Athletic Trainers’ Association position statement: conservative management and prevention of ankle sprains in athletes.: J Athl Train.: 2013 Jul-Aug;48(4): 528-45.

8)Jay Hertel.: Functional Anatomy, Pathomechanics, and Pathophysiology of Lateral Ankle Instability.: J AthlTrain.: 2002 Dec;37(4): 364-375.

9)J P Gerber, G N Williams et al.: Persistent disability associated with ankle sprains: a prospective examination of an athletic population.: Foot Ankle Int.: 1998 Oct;19(10):653-60.

10)J N Bernier, D H Perrin et al.: Effect of unilateral functional instability of the ankle on postural sway and inversion and eversion strength.: J Athl Train.: 1997 Jul;32(3):226-32.

山下 敏弘(Yamashita toshihiro)
山下 敏弘(Yamashita toshihiro)
理学療法士
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